昔からよく言われることに「家作りは3回はしないと満足行く家が出来上がらない」というものがあります。
ゼロから紙面上で作成する都合上、想像通りに行かないのは当たり前。何度か実際に失敗して試行錯誤して、初めて不満のない家が建てられるという理屈ですね。
ところが、こういった風潮も現代では徐々に変化しつつあります。インターネットの発展によって「過去の失敗談」を誰でも共有できるようになったからです。
そういったものをたくさん見聞きしておけば、1棟目から「失敗のない家」を建てることができる。そういう認識も出てきていますし、それを謳って営業しているメーカーも少なくありません。
しかし断言しておきますが1棟目は「絶対に失敗」します。
そういう前提で家を建てる準備をしてください。
スポンサーリンクネットの情報は「1つの指標」でしかない
昔に比べて住宅建築の体験談がたくさん公開されていて、それを自分でいくらでも調べられるようになったことから「今までなら多くの人が見過ごしていた部分」が可視化され、細かく打ち合わせできるようになったのは事実です。それは良いことだと思います。
ただ住宅というのはお金や家族構成、趣味やライフスタイルによって全く違う形を取るものですし、建てる土地によって物理的に可能なこと不可能なことが出てきます。ネットに書かれている体験談は「その人(家族)」のものなので、どんなに気を付けたところで他の人にとっては「指標」以上の価値を持ちません。
まして、それら全てを満たした家を建てることなど100%不可能です。
最近はネット上にあたかも「これを全て満たして下さい」と言わんばかりの要チェック項目が掲載されていたりしますが、無理です。「おたくの仕様と間取りはこれに全部対応できているのでしょうか?」と聞かれても困ります。そんな家は建ちません(無限にお金と敷地があるなら分かりませんが)
情報があるからといって絶対にそれに添えるわけではなく、新築注文住宅は結局紙面上で頭を悩ませるという状態からまだ抜け出せているわけではありません。昨今はVR技術の発展により、前よりリアリティのある打ち合わせが可能なメーカーもありますが、それが一般化してより精密になるにはまだまだ時間がかかると思われます。
この物理的事情をまず理解した方が良いですね。
新築の失敗の多くは「失敗だと感じている自分の心」によるもの
物理的事情の次は、人間的な事情です。
提案はあくまでも作り手主導で行われます。大前提としてメーカーの人間はあなた自身ではありませんから、当然「メーカー側は良いと思っていたが、あなたが良くないと思っていたこと」はゼロにはなりません。
「あると思っていたが建ってみたらなかったもの」「思っていたのと違った仕様のもの」も絶対に無くなりません。
ですから「失敗しない家作り!」なんてのはまやかしであり、そういう甘言を信じて惑わされるような家作りをしてはいけません。
「ネット上にこれだけ情報があるのだから、しっかり下調べして挑めば絶対に失敗しない!絶対に失敗したくない!」
こういう心意気の方は危険です。今すぐ改めて下さい。
そういう気持ちで家作りをすると高すぎる理想に翻弄されて「こんなはずではなかった…」という気持ちが強くなりすぎて失敗します。
住宅建築の失敗のほとんどは物理的なことではなく「失敗だと感じている自分の心」によるものです。それに比べたら「ここにコンセント作っておけば良かったな…失敗したな…」なんてのは些細な問題です。
楽しい家作りのためには、失敗するとかしないとかそういう尺度を持ち込むこと自体がナンセンス。今自分が望んでいる家はどういものなのか、それは長年に渡って維持できそうなことなのか、それを自分自身で考えた家作りを行ってください。
そうすれば、多少の失敗や不自由については「自分で決めたことだから」と納得して住むことができます。住んでいるうちに慣れてきますからどんどん気にならなくなりますし。
だから前提として「家作りは失敗するもの」だと思ってください。これが失敗しない家作りに1番大切なことなのです。
まとめ
もう1度言いますが、家作りの失敗の多くは「失敗だと感じている自分の心」の問題です。
「失敗だった!やめれば良かった!」と愚痴愚痴言っている人のクレーム的内容は、他の人からすると「え?それが普通だと思っていました」という内容であることが往々にして多いです。
だからこそ、前提から自分の思い通りにならないところがあることを理解しておくべきだと思うのです。
家作りを全く失敗しない人もいるかもしれません。100%不満のない家を1棟目から作り上げられる人がいてもおかしくありません。でもそれは「その人がそう思っているだけ」かもしれません。
同じメーカーに同じお金を払えば、原則同じようなものが建ちます。それを「良いと思うかどうか」はあなた次第です。
「家作りはある程度失敗する」と思っておいた方が絶対に良い家が建ちます。完璧を求めすぎてはいけません。
正しい認識を持って、楽しい家作りをしてください。